2016年5月30日月曜日

コンタクトレンズの基本データ

コンタクトレンズを選ぶとき、視力はもちろんのことDIAやらBCやらいろいろなスペックを基準に自分に合うものを見つけることになります。

いちど、用語のおさらい。

分類

コンタクトレンズは素材がイオン性か非イオン性か、含水率がどうかによって次の4つに分けられています。

グループI: 非イオン性低含水
グループII: 非イオン性高含水
グループIII: イオン性低含水
グループIV: イオン性高含水

このグループ分けはシリコーンハイドロゲルが登場する前に決められたもので、シリコーンハイドロゲルの特徴を表しにくいため、最近ではグループV(シリコーンハイドロゲル製)を分けて表示することもあります。

「イオン性」「非イオン性」の違いは素材の電気的性質です。ざっくりというならば、化繊のように静電気を帯びやすいものと、綿のように静電気を帯びにくいみたいな違いです。
イオン性のほうが汚れが付きやすく(陽イオンの物質がくっつきやすく)、長時間では差が出るようです。
ちなみに、静電気の話はたとえなので、イオン性のレンズで「パチリ」とすることはありません。

含水率とは文字通り「水を含む割合」です。
目には酸素が必要です。裸眼の人はそのまま直接空気に触れているので問題ありませんが、コンタクトレンズは黒目にフタをしてしまうため、その分酸素供給が減ってしまいます。
レンズ自体に水を含ませることで、その水に溶け込んだ酸素を目に供給することができるため、含水率の高いレンズは酸素透過性が高くなります。
ただ、含水率を上げていくと、今度はコンタクトレンズが乾燥しやすくなるという別の問題が出てきますので、各社が保湿成分などを配合したりして影響を抑えています。

グループI
  • (メリット)汚れにくい(タンパク質が付着しにくい)
  • (メリット)乾燥しにくい
  • (デメリット)酸素透過性が低い
  • (デメリット)硬めの装着感
グループII
  • (メリット)汚れにくい(たんぱく質が付着しにくい)
  • (デメリット)乾燥しやすい
  • (メリット)酸素透過性が高い
  • (メリット)やわらかめで装着感が良い
グループIII
  • (デメリット)汚れやすい(たんぱく質が付きやすい)
  • (メリット)乾燥しにくい
  • (デメリット)酸素透過性が低い
  • (デメリット)硬めの装着感
グループIV
  • (デメリット)汚れやすい(たんぱく質が付きやすい)
  • (デメリット)乾燥しやすい
  • (メリット)酸素透過性が高い
  • (メリット)やわらかめで装着感が良い
上記の表からわかるように、一般的にはグループIIIのレンズはほとんど市販されていません。

USAN

米国一般名。医薬品につけられる一般名。コンタクトレンズの材質もある一定のルールに基づいて命名されます。商品名とは違い素材の名称みたいなもの。

Dk値

酸素透過係数です。この値は素材そのものがどれだけ酸素を通すかを示しています。レンズの中でどれだけ酸素が移動するかというD値と酸素がどれだけ素材に溶け込むかk値の積で表されます。単位は複雑なのであまり意識しなくてもよいのではないでしょうか。(あくまでも比較ができればよい程度ですし)
このDk値は統一した測定方法で測られたものではなく、各社が自主基準で公表していますので、あくまでも参考程度にしかなりません。

Dk/L値(Dk/t値)

先のDk値は素材そのものの酸素透過係数です。
レンズそのものが実際にどれだけ酸素を通すかは、レンズの厚さに反比例します。2つの会社が同じDk値の素材を開発しても、A社は 0.05mm厚のレンズ、B社は 0.1mmのレンズに仕上げたのであれば、A社のレンズのほうが酸素を通しやすいという結果になります。
Dk/L値をこの厚みも考慮してどのくらい酸素を通すかを示した値で酸素透過率と呼ばれています。
計算方法としては Dk値をレンズの厚さで割り、1/10した値になります。このためレンズの厚さが0.1mmの場合はDk値と同じになります。
なお、レンズの厚さは度数によっても変わりますので特定の度数(-3.00Dが多い)で示します。
Dk値と同様にDk/L値も測定基準が無いのであくまでも参考値です。実際に角膜にどの程度の酸素が通るかはレンズの水分蒸発や汚れの付着によっても変わりますので、一概にDk/L値が高いレンズが良いレンズと言う訳でもありません。

PWR(SPH)

レンズの度数です。近視用はマイナス(-)、遠視用はプラス(+)であらわされます。
単位はD(ディオプター:頂点屈折力)です。

近視とは遠くのものに対してピントが合わないという状態で、それをコンタクトレンズを挟むことでより遠くまでピントを合わせることができるようになります。
どのくらいのピント合わせが必要かをピント調整ができなくなる距離を基準に示したものがディオプター(D)です。

Dの計算は(100cm)÷(ピントが合う距離)で求めます。
例えば、本の文字などが
・100cmまでは見える(ピントが合う)が、それを超えるとぼやける  100cm/100cm = -1.00D
・50cmまでは見える(ピントが合う)が、それを超えるとぼやける  100cm/50cm = -2.00D
・20cmまでは見える(ピントが合う)が、それを超えるとぼやける  100cm/20cm = -5.00D
という感じです。

ちなみに、正常な目でもごくごく近く(目から20cmくらい)はピントが合いません。これは人間の目が近くのピントを合わせることに限界があるからです。加齢によりこの近くのピント合わせ機能が劣ることを老眼と呼んでいます。

近視用の凹レンズは遠くのものにピントを合わせるためのものであり、この矯正を行うと近くのものが余計に見づらくなることもあるため遠近両用コンタクトといったものがあります。
遠近両用コンタクトレンズにはADDという数値があり1から3くらいの数字が入っています。これは加入度数といって、レンズの度数を調整する値です。物理的には凹レンズの度合いを下げるように周辺の厚みを増やします。
例えばPWR -7.50D、ADD +2.00D の場合、レンズの中心は -7.50D ですが、レンズの縁に近いところは -7.50D + 2.00D = -5.50D 相当となっています。近くを見るときに目の負担を下げるため度数を下げるような働きをしています。

老眼の人でなくても、PWRを上げるとそれだけ手元の文字を見るために目の調節力が必要となるため、PC作業中心など比較的近くのモノを見ることが多いようなケースではPWRを少し下げたほうが目に優しいと言われています。(-5.00Dの人であれば -4.50Dや-4.00D)
この場合、遠くを見る時の矯正力は下がります。言い換えれば遠くまできっちりと度数を出そうとすると近くを見る時の負担が増え、近くを見る時の負担を下げるにはあまりきっちり遠くまで見えるような度数にしないということになります。
スポーツや自動車の運転などの時は矯正視力を出来るだけ上げるようなPWRを選び、PC作業など近場にピントを合わせる時は矯正視力はそこそこにするPWRを選ぶのも目の負担を下げることになります。

一般的な視力1.5だとか0.2だとかとは直接対応していませんので、「視力が〇だから〇D」みたいにはいかないことが多いです。

CYL、AXS

乱視の矯正数値です。
CYLは乱視を補正する度数で、PWRと同じくDで表します。乱視の度合いが高いほど値が大きくなります。PWRが-2.00D以下であれば乱視の調整はする必要がないという人もいます。
AXSは乱視を矯正する軸になります。よく「どの線が太く見えますか」みたいなテストがあると思いますが、この太く見える線の場所によって乱視を矯正する角度が変わりますので、その角度を示した値です。

DIA

コンタクトレンズの直径です。立体を無視して正面から見た時の二次元的な直径をmmで表したものです。日本人の瞳の大きさは12mm前後と言われていますので、市販されているソフトコンタクトレンズは黒目全体を覆うサイズになっています。
実際には黒目をちょっと覆う程度あれば十分です。大きさによってはまぶたや目尻などに引っかかりを感じる時があります。

BC

ベースカーブと呼ばれます。曲率(曲がり具合)を表していて、BC9.0なら半径9.0mmの球のカーブにぴったり沿う形ということになります。

人間の眼球もほぼ球状ですから、本来は目の大きさ(形)にあったBCを選択する必要があります。
球体にかぶせるイメージからも想像できるように、本来の目の形よりもBCが緩い(値が大きい)場合はズレやすかったりフチに違和感を感じやすく、BCがキツイ(値が小さい)場合は目に貼りつきやすい(吸盤みたいになる)傾向があります。
とはいうものの、ソフトコンタクトレンズでは性質上ある程度の差異は問題にならないことが多いです。

コンタクトがずれやすい、外れやすいという人は可能であれば小さめのBCのものに変えると解決できるかもしれません。
使い捨てのコンタクトレンズの場合同一製品ではBCが一種類しかないものが多く、合わない場合は他社もトライしてみるしかないのが現状です。

中心厚

コンタクトの中心の厚さです。
近視用のレンズは凹レンズのため、一般的には中心がいちばん薄い部分になります。


こうしてみるといろんなデータがあって、なかなか自分の目に合うものを探すのは大変そう。スペックの数字データがドンピシャでも、素材が合わなかったら終わり。
でも、目に合わないという感覚をどう克服していくかは数字ベースで考えたほうがよさそうな感じです。

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